夜の道頓堀は色とりどりのネオンに包まれ、観光客と思しき外国人でごった返す道はどこまでも明るかった。
私たちも観光客まるだしでネオンを堪能したり、吊るされたフグの写真を撮ったり、食い倒れ人形の写真を撮ったりした。
なんというか、道頓堀のネオンは派手というか、色の組み合わせが強烈な気がした。夜のお店でもないのになんでその色を、みたいな。全体的にぼんやり赤っぽくて、新宿や渋谷というより香港とか台湾のイメージに近かった。香港も台湾も行ったことないけど。
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人の流れに乗って歩いていると、いつの間にか戎橋のたもとに到着していた。
橋の上にいるたくさんの人がスマホを空に向けて何かを撮影している。
なるほど、あの方向にグリコの看板があるのだな。こちらからでは死角になっていてまだ見えない。
橋の中ほどまで行って反転、グリコの看板とご対面。グリコポーズの人物が青いネオンに映える。でかい。周りの人と同じようにスマホで撮る。観光ミッションひとつ終了。
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ガイドブックにあったお好み焼き屋さんをグーグルマップにピン打ちして歩き出す。
近い。歩いて数分らしい。
メインの通りから少し横道に入ったところで、目指すお好み焼き屋さんのちょうちんを発見。
お好み焼き、おかる。ここだ。
人気店らしいので待ちは想定内。5.6人の最後尾について、そこそこの時間待って、入店する。
ここはお好み焼きにマヨネーズで絵を描いてくれることで有名、と書いてあった。
詳しく調べてないけど、全部のお好み焼きに描いてくれるんだろうか。見たサイトにはそこまで書いてなかった気がする。基本サービスなのか別料金なのか。マヨネーズ絵描き職人みたいな人がいて、その人が全部に描いているのか。
システムがよく分からないままメニューを見る。
絵のことはメニューに書いてなかった、と思う。
注文を取りに来た若い女の子に、ビールとお好み焼きを2枚頼んだ。とりあえず絵のことは何も聞かなかったし、何も言われなかった。さて、どうなる。
妻とビールで乾杯し、周りのテーブルを見る。
どの鉄板もほとんどお好み焼きが残ってない。
どうやら見える範囲で新しくお好み焼きを焼くのはここが最初のようだ。
先ほどの若い女の子がお好み焼きのタネを持ってきて、目の前の鉄板で焼き始めた。彼女が焼いてくれるらしい。
店員さんはこの女性の他にベテラン風の男性もいて、二人ともあちこちのテーブルを行ったりきたりしている。注文に焼きにフル回転といった感じ。
なんとなく、絵を描いてくれるのはあのベテラン風の男性だろうな、と思った。
しばらくすると女の子がきて、お好み焼きをひっくり返してヘラでぎゅうぎゅうと押さえつけ始めた。びっくりするほど押す。関西風のお好み焼きでこんなに押すのを初めて見た。中身が周囲から盛大にはみ出るのもお構いなしで、ぎゅうぎゅう押した。最後に形を整えて、女の子は別のテーブルに去っていった。
なんかすごいものを見たな、と妻と顔を見合わせた。
次に女の子が私たちのテーブルに来たとき、その手にはソースとかマヨネーズとか、仕上げに使うものがあった。どうやら最後まで彼女がやってくれるらしい。
ここでちょっと驚いたのが、マヨネーズの入れ物。
てっきりマヨネーズは細い口がついたボトルでくると思っていたが、持ってきたのは弁当とかについてる小分けにされた袋入りのマヨネーズの端っこを切ったものだった。
これで絵を描くなら大した職人芸だな、と思うと同時に、やっぱり絵を描くのはベテランの別の店員さんなのかな、と思った。
彼女は手際良くソースを塗り、青のりを振り、その流れのままマヨネーズの小袋を手に取った。
この時、おお、この若い女の子が描いてくれるんだ、つまりこの子はバイトの子じゃなくてちゃんとした店員さん、あるいはベテランのバイトさんだったということか。まあどちらにせよこの店にいる全員がマヨネーズで絵を描くスキルを持っている、ということで…それはすごいなぁ、なんてことを思った。
彼女は器用にマヨネーズの小袋をペンのように扱い、私と妻のお好み焼きに、通天閣と食い倒れ人形の顔をそれぞれ描いた。
途中で小袋のマヨネーズを切らすことなく、同じ線の太さで、最後まで描いた。大したスキルである。
絵に感動しながらお好み焼きを食べたせいか、味のほうはそんなに覚えてない。
ふわふわで美味しかった、と月並みな感想しか言えないのがなんだか申し訳ない。
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ホテルに帰ってゆっくりしながら、明日の予定を考える。
やはりカレーが気になる。カレー好きなら、自由軒は一度は行っておいたほうがいい気がする。この機を逃すと一生食べない可能性もある。……。
カレーに決めた。
妻に予定変更で明日はカレーだと告げる。
駅からホテルに行く途中、一緒に食品サンプルを見たときから明日はカレーになるだろうと予想はしていた、と妻は言った。
あらためてガイドブックを確認する。
…ん?さっき見た食品サンプルの店は自由軒本店だったような気がするけど、明らかにガイドブックの自由軒本店と店構えが違う…
あれ?